市民風車は、多くの皆さんに支えられて回り始めます。
クリーンな電気は、人、街、モノ、コトをつなぐエネルギーも届けます。
ここでは、市民風車を介してつながったさまざまな皆さんをピックアップ。
一人ひとりの想いを紹介していきます。
連載10広報を通じて社会との信頼を築く
事業管理部
風力発電事業は発電設備を建てるまでの準備期間も、発電設備を運転する事業期間もきわめて長い。地元の皆さんのご理解を得る上で広報活動は重要であることから、当社では事業管理部がタイムリーな情報の発信を担当している。短期的な成果には結びつかないものの、会社と社会を結ぶ縁の下の力持ちとして役割を果たしている。
九嶋春菜
秋田県秋田市出身。2019年入社。事業管理部に所属、人事・総務などを扱うほか、広報担当としてホームページを管理。外部制作会社と連携しながら、当社ならびに再生可能エネルギーに関心がある方々に向けて風力発電所の開発実績、プロジェクトの進捗状況、地域貢献活動等を情報提供。さまざまなコンテンツのアップデートを通して、当社の継続的な取り組みを知っていただきたいという思いで仕事に励んでいる。
風車がつないだ秋田と北海道の縁
当社は2001年に創業して以来20年余り社歴を重ねている。これまで全国で開発した風車も2024年1月現在で56基まで増えものの、組織の規模は大きくない。新規プロジェクトの用地選定から発電所稼働までの計画全般を担う事業開発部、発電設備の安定稼働を支える技術部、そして会社全体の多種多様な業務を一手に扱う事業管理部の3つの部署がすべてである。他部署の業務を全員でカバーしあうことで、会社を日々動かしている。
九嶋春菜は秋田市の出身。大学時代を札幌で過ごし、卒業後も地元には戻らず、札幌の企業に就職する。久しぶりに帰省すると、実家の自分の部屋の窓から港の方向に風車が立っているのが見えた。秋田県内でも風力発電所が増えているとは聞いていたが、実家から見えるとは思わなかった。やがて札幌に本社がある運営会社が建てた風車もあると聞き、自分と縁があるように感じられた。もしかすると北海道と秋田に関わる仕事ができるかもしれない。淡い期待をいだいて履歴書を送ると、すぐに面接日が決まった。
対応してくれた役員はともに堅苦しさがなく、業界や会社の説明も分かりやすく、今後の計画もはっきりしている。「入社したら何がしたいですか」。まったく畑違いの業界で働いている自分に、そんな質問をするところも新鮮だった。その時は「風力発電や再エネをもっと一般の人に知ってもらいたいです」と答えたのだが、今思えばそれが広報の仕事につながっているようにも思える。自分でも驚くほどすんなり採用されて2019年に市民風力発電に入社、事業管理部に配属されることになった。
人事・総務とホームページ管理を兼務
現在は採用関連、休日や残業など給与に関わるデータや資料の管理に対応しているほか、会社が支給しているPC・スマホの管理、ネット通信関係の管理、行政への各種申請手続きなどの業務を担うかたわら、広報の窓口としてホームページの管理を任されている。業務の流れとしては、発信したいニュース等があると情報をテキストに整理し、画像データとともに協力会社に送る。出来上がったデザインを社内チェックして、テストアップを指示。社内で最終確認をしてゴーサインを出す。ただ実際はスムーズに行くことはまれで、多忙なスタッフとのスケジュール調整がうまく行かず、社内チェックに日数がかかってしまっている。
ホームページは2023年3月にデザインをリニューアルし、それに合わせて「地域とともに」という新しいコンテンツを加えた。風力発電事業は地域の皆さんに発電施設を受け入れていただくことが大前提であり、地域貢献は重要な事業活動の一部である。そのことを誰より知っているのが、長期にわたってプロジェクトに携わる事業開発部のメンバーだ。彼らが地域にしっかり入り込み、地域の皆さんと深くつながっているからこそ、当社が選ばれているということをさりげなく伝えられたらと思っている。
広報の一環で中学生に「再エネ」の職業講話
2023年11月には、札幌市内の中学校で「職業講話」を担当した。これは学校と中高生向けキャリア教育支援誌「さくらノート」を発行している企業との共催によるもの。生徒たちが働くことの意義や目的について学び、考えるための機会として現場で働いている人を講師に招き、生徒たちに仕事内容や業界の実情を紹介している。今回の依頼は当社の技術部の紹介記事がさくらノートに掲載されたことから、九嶋が引き受けることになった。
20名の生徒を前にスライド資料を見せながら、当社の紹介、風力発電の仕組み、自分が所属する事業管理部と技術部の仕事の内容などについて話をした。授業に参加した生徒からは、建設費が1基およそ10億円かかること、建設費の一部を市民も出資していることを説明すると、驚きの声が上がった。後日、「数年もの間生態系を壊さないよう調査を行なっていることに感動した」「大変だけど人の役に立つ仕事だと思った」「裏で支えている人の大切さを知った」といった感想文もいただいた。
今回の講話は九嶋本人も貴重な経験になった。再生可能エネルギーや会社の事業については分かっているつもりでも、それを基礎知識がない中学生でも理解しやすく、興味を引く内容にまとめるのはなかなか難しく、自分の勉強にもなった。一般的な広報とは勝手が違うが、自分の話に関心を持ってくれた生徒がいつか就職先の候補に再生可能エネルギー関連の会社や組織を加えてくれれば、準備に時間をかけた甲斐がある。
より魅力的なコンテンツづくりに挑戦
九嶋が今広報担当として挑戦してみたいことが2つある。ひとつが動画コンテンツを増やすことだ。さまざまなプラットフォームで動画の活用が一般化している。言うまでもなく、動画はテキストや画像といったコンテンツに比べて情報量が圧倒的に多い。多少長くても飽きずに見られるし、強い印象を残すことができる。特に若い世代は動画を使ったコミュニケーションが標準だ。テキストベースのコンテンツより格段に費用がかかるところが悩ましいが、動画コンテンツはぜひ近いうちに実現したい。
もう一つ、個人的に改めて挑戦したいと思っているのがカメラ撮影である。事業開発部はさまざまな地域貢献活動に取り組んでいるが、現場ではカメラ撮影がどうしても後回しになってしまい、ホームページに載せられる写真の枚数がいつも少ない。そこで札幌のお隣、石狩市で実施している活動については自分が撮影を担当することで、ホームページにアップする頻度も増やせるのではないかと考えている。裏方として、事業開発部の取り組みをサポートできれば広報担当としてもうれしい。
市民風力発電は地域に根ざした発電事業者であることを、アイデンティティーにしている。「発電設備が建ったら地代を払うだけ」ということは絶対にしたくない。陸上風力による再生可能エネルギーの普及を通じて地域の活性化に貢献したい、地域と共生したいという思いは本気である。その地道で取り組みをさまざまなコンテンツで紹介することで、自分たちと社会の間に信頼関係を築き、維持するのが広報の目的だ。九嶋の仕事はますます増えることになりそうだ。