つながる通信 05

市民風車は、多くの皆さんに支えられて回り始めます。
クリーンな電気は、人、街、モノ、コトをつなぐエネルギーも届けます。
ここでは、市民風車を介してつながったさまざまな皆さんをピックアップ。
一人ひとりの想いを紹介していきます。

連載 05

風車の縁が生産地と組合員をつなぐ

生活クラブ生協

クライアント

HGFが開発した市民風車のスキームを活用すれば、さまざまな団体が風力発電事業に参加できる。その第1号が生活クラブ風車だ。首都圏の4つの生活クラブで風車を建てたことも画期的だが、建設地の地元と協働して、さまざまなビジネスを立ち上げている。市民風車の第2ステージは、こういうものかもしれない。

生活クラブ生協

1968年、創立。日本に約600ある生協の中の一つのグループで、「自然と共生し、食べもの、エネルギー、福祉をできるかぎり自給・循環させるサステイナブル(持続可能)な生き方」をサポートすることに取り組む。生活クラブ風車「夢風」は、生活クラブ生活協同組合・首都圏4単協(東京・神奈川・埼玉・千葉)の出資で建設された。

青空の下で開かれた「夢風」5周年記念イベント

青空の下で開かれた「夢風」5周年記念イベント

2017年の夏の秋田県は梅雨前線が活発で、
たびたび記録的な豪雨に見舞われた。
その厚い雲が晴れ、久しぶりに青空が広がった7月29日、
生活クラブ風車「夢風」が立つにかほ市芹田地区の小高い丘で
建設5周年記念イベントが開かれた。

参加したのは、にかほ市長、風車の建設資金を出資した
東京・神奈川・埼玉・千葉の生活クラブ組合員、
(一社)グリーンファンド秋田、市民風力発電、食品加工会社、生活クラブ生産者など。
風車が立つ芹田地区の皆さんの参加も多く、
大きなテントの下に170人ほどが賑やかにイベントを楽しんだ。
子どもたちのお祝いの太鼓あり、プロミュージャンの歌あり、
地元の皆さんと共同で開発した夢風ブランド品の試食あり。
アルコールも手伝って、会場は笑顔で包まれた。
風車建設を通じて結ばれたにかほ市と首都圏の人たちが陽気に交流し、
さながらお祭りのような時間が過ぎていった。

建設議論の流れを変えた、3.11と原発事故

始まりは、2010年4月に生活クラブ神奈川が
40周年(2011年)記念事業として風車をつくる提案からだった。
以前から省エネベースで地球温暖化対策に取り組んでいたものの、
それだけでは十分ではない。その対案として自分たちでエネルギーを創る
取り組みを始めてはどうか。それを象徴するものが風車だった。

2000kWの風車を建てるには、1基何億円もかかる。
そのため、東京・埼玉・千葉の生活クラブにも呼びかけ、
首都圏4単協の共同事業として取り組むことが検討された。
建設地については、市民風車を数多く手がけてきた
NPO法人北海道グリーンファンドと協議し、にかほ市の現在の場所に絞った。
風況に恵まれていること、国の補助金があること、
時間のかかる環境影響評価が進んでいたことなどから総合的に判断した。

だが、風車の提案には戸惑う組合員や理事が多った。
「生活クラブは食の共同購入だけでいい」
「生協の出資金を余計なことに使うな」という声もあった。
そこで現地見学会を催し、何度も学習会を開き、活発に議論を重ねたが、
まさにその最中に3.11と原発事故が発生。流れは大きく変わった。
それまで反対だった人からも賛成の声が出されようになり、
3カ月後の6月には各単協の総代会で風車建設と事業計画、
(一社)グリーンファンド秋田への出資が決まった。
2012年4月、かくして生活クラブ風車「夢風」が運転を開始する。

生産地と生活クラブで「夢風」ブランドを開発

風車建設を議論する中、検討されていたテーマがもう一つあった。
それは、生産地とどう連携するかというものだった。
「遠くでつくった電気を持ってくれば、原発と同じ構造になる。
それを嫌う組合員が結構いた」。
(生活クラブ神奈川専務理事・半澤彰浩氏)
特産品の取り扱いは決めたが、それだけではつまらない。
やるなら地元の生産者や食品加工会社とアイデアを持ち寄り、
「夢風」ブランド品をつくることを決め、各単協が知恵を絞った。
2016年度に開発された日本酒大吟醸「夢風」
「タラーメン醤油味」「鱈しょっつる」「べっぴんさんいちじく」は
すでに生活クラブのカタログに掲載され、
今年度も新しいブランド品が5品増える予定とのこと。

また、芹田地区営農組合の生産者との協議の中から、
地元の皆さんが自ら加工用トマト、大豆などの栽培をスタート。
収穫された野菜は、生活クラブの消費材である
トマトケチャップや豆乳の原材料として使われ、
収入の形で地元にお金が落ちる仕組みになっている。

見えないエネルギーが人と地域を結ぶ

「夢風」の運転開始から5年。初めこそ売電価格が低かったが、
2017年7月のFIT(固定価格買取制度)施行以降は剰余が生まれ、
出資したお金を順調に返済できている。
風車建設を縁に結ばれた産地とは、相互交流も盛んだ。
風車建設がきっかけで4単協の間に連帯が生まれ、
共同の取り組みが増えたこと、
職員を(一社)グリーンファンド秋田に出向させることで生活クラブ内に
自然エネルギーの人材を育成できていることも収穫である。

生活クラブは、2014年10月に生活クラブエナジーを設立。
自然エネルギーの割合が高い電気を共同購入し、
2016年10月から全国の組合員の家庭にも供給を開始した。
今後は、脱原発と自然エネルギーを広げるという考え方の
ご当地エネルギー発電所との連携をさらに広げていくとのこと。
見えないエネルギーは、人と地域をしっかり結びつけている。

↑TOP